超狭帯域LED光とは
※所属、役職は取材当時のものとなります。
発毛、美顔など人体に優れた効果を発揮する超狭帯域LED光とは。
「面」で当てる超狭帯域赤色LED照射は、頭皮下の深達度に優れ、十分に毛乳頭細胞をはじめとするさまざまな細胞の活性化をうながし、育毛・発毛効果を発揮する。
しかも赤色LEDだけでなく、緑色、青色LEDも注目されているという。
幅の狭い単色光をある程度の「面」で当てる装置の開発
超狭帯域幅の狭い単色光をある程度の「面」で当てる装置の開発
まだ十分には解明されてはいないんです。いま分かっているのは、髪の育毛・発毛には赤色が一番いいだろうということ。私は美顔効果としてLEDを使っていますが、緑色は中高年の方の保湿には効果を発揮しています。また青色は、安眠効果があるだろうということまで分かっています。
体の中には、赤色が一番深くまで入り、緑色は浅く、そして青色は表面に近いところまでしか到達しません。赤色が一番温かく感じ、赤外線に近い。緑色は多少温かく、青色は温かみが一番少ない。ただし、これらを一緒に体に当てても効果は少ない。それぞれの色が混ざって、波長の幅が広い光を当てると干渉を起こします。これは太陽光線と同じで、太陽光線にはあらゆる波長が入っていますから相互に干渉し合って、何の効果もないんです。
LEDを個別に体に当てようとした発想は、何から得たのですか。
レーザー光線は短波長で、波長にはほとんど乱れのない一色で、630nm(ナノメートル)ならほぼ630nmだけの光です。しかしレーザー光線はピンポイントに当てて治療するにはいいのですが、顔の全面や頭皮全体に当てることは不可能です。アメリカではぐるりと動かすことで治療効果を出そうというものもありますが、非常に効率が悪い。
そこで考えたのは、なんとかして幅の狭い光をある程度の「面」で当てることはできないか、と。相互干渉の少ない超狭帯域を面で当てることで、波長ごとに異なった効果が人体に起きるだろうと予測を立てました。それは10年ほど前のことで、本格的に研究開発に取りかかりました。どうやったら面で超狭帯域で、レーザーと同じような波長に近い光を出せるのかをずっと考えた結果、最終的に思いついたのがパワーの強いLEDの光でした。
LEDを超狭帯域で照射する方法とは、どのようなものでしょうか。
いろいろな波長が出る光をレーザーに近い超狭帯域で取り出すのに使ったのは、レーザー用のバンドパスフィルタです。もちろん光に関する専門会社にお願いし、とりあえず真っすぐな光を出すようにしました。光をバンドパスフィルタに通すと、光のエネルギーは何分の1かに落ちますが、超狭帯域の短波長になります。その光を次に凹レンズによって広げ、面で照射できる構造にしたのです。
毛乳頭細胞だけでなく、さまざまな細胞を活性化
実際に先生は、開発したLED照射装置を使い、超狭帯域の赤色LEDを男性モニター患者10人の頭皮に20分間、週1~3回、3~8 ヶ月行った結果、育毛の推移を見ると、有効率が100%。うち2名がほぼ治癒、7名が著効、1名が有効となっています。
ほとんどの人に効果が出ました。ほとんどの人の抜け毛は減少し、長い間照射し続ければ、かなりの確率で毛が生えてきました。
超狭帯域の赤色LEDは毛乳頭細胞を活性化させているのですか。
それについてはまだ、はっきりとしたことは言えません。毛乳頭細胞だけでなく、すべての細胞を活性化させている可能性があります。そうしたさまざまな細胞が関係して、最終的に抜け毛が減り、毛が生えてきていると思われます。
現在、京都大学工学部、高知大学医学部皮膚科、そして大阪大学医学部の先生方との研究が始まっています。
LEDを超狭帯域にすることで効果が出ることはすでに掴んでいますし、ある程度のストーリーも見えてきています。あとは肉付けとなる研究成果を出し、発表することになると思います。
皮膚の再生にも効果を発揮されているようですね。
すでに大阪大学の板見先生の実験では、創傷治療の結果も出ていますから、細胞の活性化にはいろいろと役立つと思います。例えば、寝たきりの患者の場合、褥瘡(床ずれ)が生じますが、超狭帯域の赤緑のLED光の照射を組み合わせることで相乗効果が起き、早い段階で褥瘡を小さくするのでは、と考えています。
家庭用の装置が普及されれば、自宅で毎日15分、超狭帯域の赤色LEDを照射すれば抜け毛を抑え、育毛の効果が出てきますし、また超狭帯域の青や緑のLEDは美顔に効果がありますから、女性が40~50歳になっても20~30歳の肌つやや弾力を維持できれば、と思います。さらに超狭帯域の青色LEDは、強い入眠効果があり、不眠症の方の朗報となるでしょう。
今後安価な装置が開発され、いろいろな分野で超狭帯域のLED照射が手軽にできるように、広く普及されることを願っています。
インタビュー・文/佐藤彰芳 撮影/飯塚吉純
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