プラズマクラスターとネイチャーテクノロジーを中核としたシャープの〝モノづくり力〟でアデランスの熱い思いを〝カタチ〟にしました。

※所属、役職は取材当時のものとなります。

静電気除去や保湿効果があるシャープの「プラズマクラスター技術」と、大阪大学とアデランスが共同で開発を進めてきた、頭皮に照射するとヘアケア効果などが期待できる赤色LED「N-LED beam」を搭載。この二つの要素を余すことなく髪と頭皮に届けようと、もう一つのシャープが誇るモノづくり技術「ネイチャーテクノロジー」によって2017年秋に誕生したドライヤーが「N-LED Sonic」です。
この画期的なドライヤーは今、アデランスのサロンはもちろん、多くの理美容室に導入され、頭皮や髪のケアに興味を持つ幅広い層に支持されています。
そこで、「N-LED Sonic」ドライヤーを開発したシャープ株式会社IoT HE事業本部を訪ね、シャープのモノづくり力の神髄に迫ってみました。取材に対応していただいたのは、健康美容企画開発部の大塚雅生部長と、開発に関与した各部門の方々です。

静電気除去や保湿効果があるプラズマクラスター技術

まず最初に、シャープのプラズマクラスター技術とはどのようなものなのでしょうか。

プラズマクラスターが商品化されたのは18年前です。その後多くの改良を重ね、プラズマクラスターの効果をさらに発展させ続けていて、現在もシャープのさまざまな製品に搭載され続けています。
プラズマクラスターとはプラス(+)イオンとマイナス(−)イオンを人工的に空気中に放出する技術で、元々は空気清浄機の技術として開発されました。普通の空気清浄機はフィルターで悪い空気を濾し取りますが、シャープの空気清浄機は、+と−イオンを放出させ、それらを室内に放出して能動的に浄化します。例えば、ゴキブリを駆除するにはシート式殺虫剤と燻蒸式殺虫剤がありますが、燻蒸式殺虫剤が部屋の隅にいるゴキブリを駆除するように、プラズマクラスターは+と−イオンが部屋全体に飛び出して部屋を空気清浄するという能力をもっています。
この+と−イオンですが、森の中や滝のまわりの大自然に満ち溢れている水素(H)の+イオンと酸素(O2)の−イオンのことです。ちなみにイオン濃度は都市部では1㎠あたり+と−イオンはともに200個ほどですが、森林では1㎠あたり+イオンは600個、−イオンは800個ほどが存在します。そこでプラズマクラスターは、プラズマ放電によって空気中の水分を電気分解し、自然界にあるイオンと同じ種類の+と−イオンを人工的に作り出しているのです。放出された+と−イオンには周りに水分子が寄り集まり、ぶどうの房(=クラスターの意)のようになって安定して空気中を飛びはじめます。これらの+と−イオン効果には次の三つの基本的な作用があります。
一つは、ホコリを付着しにくくする「除電(静電気除去)」効果があります。そして二つ目は、イオンを取り囲む水分子が髪や肌に水分子コートを形成し、「髪と肌の水分を保持する」効果を発揮します。そして三つ目が、空気中に漂っている微小な粒子(浮遊菌、浮遊カビなど)の表面に付着し、強力な酸化力を持つ「OHラジカル」というものに変化し、菌やウィルスを抑え、除菌するなど「空気浄化・脱臭」効果を発揮するのです。そして最終的には、H+OH=H2O(水)となって空気中に戻るというのが、プラズマクラスターのメカニズムです。
このように、シャープのプラズマクラスターはいまや空気清浄機はもとより、冷蔵庫、掃除機、洗濯機などの家電製品、静電気除去などを目的にした食品工場、空気環境の改善を目的とした公共空間、ホテル、鉄道車両など幅広い分野にわたり、世界109の国と地域で幅広く展開されています。

(左の会議写真)「N-LED Sonic」のデザインには関連事業部の多くの精鋭が関わった。
(中)頭皮に赤色LED光を効果的に照射、髪をかき分けてプラズマクラスターイオンを送り込むために取り付けられた送風口に取り付けられた「かっさアタッチメント」
(右)アマツバメの翼をヒントに高性能化した送風装置が組み込まれている。

 

では、「N-LED Sonic」に搭載されたプラズマクラスター技術は、具体的に髪と頭皮のケアにはどのような効果を発揮しているのでしょうか。

ドライヤーの本来の目的は髪を乾かすことですが、一般的なものはヒーターで非常に高い熱を加えるので乾かし過ぎるのです。しかしこの「N-LED Sonic」はプラズマクラスターをどんどん放出しますから、髪が乾きながらもたっぷりの水分子を加えて髪をコーティングして髪のうるおいを保つことができます。また、+と−イオンで静電気を中和して除去しますから、滑らかでサラリとした髪にしてくれます。
では、実演(左の写真参照)をしてみましょう。プラズマクラスターなしのドライヤーで乾かしてブラッシングすると、髪が広がって髪の毛が絡み合って櫛どおりが悪くなり、枝毛・切毛のもとになります。「N-LED Sonic」で乾かしてブラッシングすると除電され、潤いを保ち、櫛どおりも滑らかです。どれだけ電気の帯電量が違うかというと、プラズマクラスターなしに比べて4分の1ほどにおさめることができます。静電気抑制効果のメカニズムはこうです。ふつうブラッシングすると摩擦により静電気が発生します。髪は+に、ブラシは−に帯電し、まとわりつきが起こります。しかし帯電した髪にプラズマクラスターを当てると、髪には−イオンが、ブラシ側には+イオンが働き、それぞれの静電気を抑制するのです。

髪も傷みにくいのですね。

キューティクルが見えるようにあえて結んだ毛髪の拡大写真があります。これは毛髪に温風を当てながら約2カ月相当ブラッシングした結果の拡大写真です。プラズマクラスターイオン無しではダメージを受けてしまいますが、プラズマクラスターイオン有りでは、電気摩擦によるダメージを抑え、ツヤのある髪が保てています。
このようにキューティクルを保っている理由として、当社調べでプラズマクラスターイオン効果で水分量が16%アップ、潤い効果が上がっていることも実証しています。また髪の毛の弾力も向上し、髪のクセなども改善するなど、当社や第三者である機関で調べて数値化したエビデンスに基づいた商品作りをしています。

(左)プラズマクラスターなしのドライヤーで乾かしながらブラッシング。静電気を帯びて髪の毛が広がる
(右)「N-LED Sonic」 で乾かしてブラッシング。徐電され、潤いを保ち、櫛どおりも滑らかだった

自然界の力を応用したネイチャーテクノロジー

送風口に「かっさアタッチメント」というものを装着していますね。

これは5本の指のようなものですが、これで髪をかき分けながら頭皮に効果的に、アデランス様の赤色LED光「N-LED beam」を照射します。このアデランス様の赤色LEDの技術に私も20年前に出合っていれば、(自らの頭を指しながら)こうはならなかったのに、と嘆く次第です(笑)。
また同じく、高濃度のプラズマクラスターイオンを髪をかき分けながら頭皮に届けることで、水分子コーティングで頭皮の角質層の潤いを保ち、それにより頭皮の皮脂を抑制して皮脂バランスを整え、頭皮環境を改善することができます。さらに頭皮の清浄を保つことで、フケ・かゆみを抑制することができるのです。

さて、シャープのネイチャーテクノロジーとはどのような技術ですか。

シャープ独自の誇れる技術で、大自然の賢い部分を製品に取り込み、その製品の価値を高める技術です。例えばエアコンの羽根には鳥の翼を研究した成果を、掃除機の中のゴミを圧縮する部分には猫のザラザラした舌をというように、自然や動植物などを研究した成果が組み込まれています。
海洋系や船舶系の学問をして来た人たちは海の中を泳いでいる生き物を例にしたテクノロジーを考えていますし、私自身は学生時代には航空工学を勉強していましたから、何か新しいものがないかと探っているなかで鳥の翼について研究しました。現在こうしたネイチャーテクノロジー技術はこの10年で25技術が生まれ、合計28の商品に応用されています。
「N-LED Sonic」には鳥類最速といわれるアマツバメの翼を研究した成果が組み込まれ、強烈な送風を実現することができました。この風とかっさで赤色LEDやプラズマクラスターを効率よく頭皮まで送り込むできます。また、ロングヘアーの方でも効率よく潤いのある髪に乾かすことができます。

大きな感じがしますが、3色の色合いとデザイン性は素敵ですね。

ありがとうございます。持ってみれば分かりますが、後ろ側に重心がかかるようになっています。女性の方でも負荷を感じないように全体のバランスは綿密に考えています。

インタビュー・文/佐藤 彰芳 撮影/圷 邦信、後藤 裕二