家庭で使われるようなLED照明を当てても、発毛効果があるというわけではないんですね。
乾氏: 家庭用の照明では、いくら当てても表皮のところで反射してしまいますから、発毛効果はないですね。
大阪大学大学院医学系研究科 皮膚・毛髪再生医学寄付講座准教授
日本臨床毛髪学会理事乾 重樹 准教授
「赤色LED照射をしたマウスに毛が生えてきた」
乾氏: 最初の実験はヘアサイクルが休止期に入っているマウスで行いました。複数のマウスの毛を剃り、それをLED光を照射するグループと、照射しないグループにわけて実験を行いました。もし赤色LED光に何らかの効果があれば、休止期から成長期への誘導が速くなり、早い段階で毛が生えてくるであろう、というのが私の仮説です。
2~3日おきに週に3回ほど照射を続けたところ、2週間ほどは目立った変化はありませんでしたが、それを過ぎるころから顕著な変化が現れました。
一般にマウスの休止期の皮膚は白いんですが、毛が生えてくるとそれが黒くなる。LEDを当てたマウスは黒い部分が増え、当てないマウスは白いままでした。LEDを当てたマウスの黒くなったところの面積をはかると、統計的に有意な量で毛が成長していることがわかりました。実験するまでは半信半疑だったんですが、実際には驚きの結果となりました。
●なぜそのようなことが起こるのでしょうか。
赤色LEDの毛成長への影響のメカニズムを調べるため、培養ヒト毛乳頭細胞に赤色LEDを照射した後、細胞を回収し、RNAやmRNAを抽出して、どんな因子が増減しているのかを調べました。
毛成長に影響を及ぼすことが知られている増殖因子の中でもHGF、Leptin、VEGF-Aといった物質の濃度が有意に上昇していることがわかりました。赤色LEDは毛乳頭からの増殖因子の分泌を刺激し、毛成長を促進していると、現時点では考えています。
●LED照射は、従来の飲み薬や塗り薬を代替するものになりますか。
それは難しいですね。プロペシア、ミノキシジルにとってかわるほどの効果とはまだ言えません。ただ、これらと併用して使えば、さらに効果が高まることは確かでしょう。
インタビュー・文/広重 隆樹 撮影/圷 邦信
乾准教授インタビュー
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