円形脱毛症や男性型脱毛症の患者さんが、かつら(ウィッグ)をつけると見た目の症状をカバーできるため、気持ちに張りが出て、仕事や生活の質が改善される──。
これは一般的に言われていることだが、これまでそのことを科学的に示すデータがなかった。この課題に取り組んだのが大阪大学の乾重樹准教授だ。世界初ともいえる、かつら(ウィッグ)の心理的QOLに関する統計的調査を行い、かつら(ウィッグ)がもたらす心理的役割を解明した。
■ウィッグの有用性について医学的データがなかった
―どういうきっかけから、かつら(ウィッグ)に関心を持たれたのですか。
2010年に日本皮膚科学会において脱毛症の診療ガイドラインが策定されました。その中でかつら(ウィッグ)についても推奨度を定めようとしました。そこで、医学的にかつら(ウィッグ)が有用であるということを示す根拠になるデータがあるのかどうかを調べたのですが、これがないんですね。脱毛症の患者さんは、一般にかつら(ウィッグ)を着用することで、心理的コンプレックスが改善され、前向きに生活できるようになるとは言われているのですが、それを医学的な視点できちんと調査したデータはなかった。
少なくともかつら(ウィッグ)が患者さんに対して心理的によい働きをしていることを示さなければ、ガイドラインの中でこれを推奨することはできません。
初回記事公開日 :2015年10月23日