園田マイコさんに聞く
前編 病気と向き合って逃げずに治療したから、今ここにいる。
2016年6月19日、東京臨海副都心の有明にあるがん研有明病院で、病院が舞台とは思えない華やかなイベントが開催されました。それは乳がん患者さんがモデルを務めるファッションショー、「第2回乳がん♥サバイバーズコレクション」。
「第24回日本乳癌学会学術総会」(6月16日~18日)に連動して開催された一般向けイベントのひとつで、このイベントにボランティア・スタッフとして参加してモデルさんたちの指導に当たり、ご自身もトリを飾ってランウェイ※1を歩いたのが、当社のウィッグモデルを務めていただいている園田マイコさんです。その余韻も冷めない6月某日、当社にお越しいただき、当日の舞台裏などをお聞きしました。
※1 ファッションショーでモデルさんたちが歩く細長い舞台のこと
―― 「第2回 乳がん♥サバイバーズコレクション」、ものすごい盛り上がりでした。
一人ひとりのモデルさんが登場されるとき、その方のプロフィールがご紹介されるという形でしたが、聞いているだけで涙涙、見ている私たちにもさまざまな思いがあふれました。
- 私たちスタッフは舞台の裏にいて彼女たちの姿を見られませんでしたが、モデルさんたちのプロフィールを聞いているだけで、みんな泣きっぱなしでした(笑)
―― このショーの様子は早速、ネットメディアでも取り上げられましたね。
- 朝日新聞デジタル
- 乳がん患者、キラキラ歩む 今年もファッションショー(2016年6月19日)
- YOMIURI ONLINE ヨミドクター
- 乳がんでも「私は私」…体験者ファッションショー
新婚旅行から戻るやいなや乳がんを宣告された方、小さいお子さんを連れてランウェイを歩いた方、がん研有明病院でがんの手術をされたお父様と一緒に歩いた方・・・いろんなドラマがありましたが、皆さんが本当にきれいでキラキラしていました。アデランスはホームページを通じて多くの皆さんにご報告し、「どうぞ元気になってください。がんになっても美しく、前を向いて歩いてください」と伝える義務があると思い、当日、モデルさんたちのウォーキング指導に当たられたマイコさんにお話を伺った次第です。
- ボランティア・スタッフの方もほとんどがサバイバーです。実はプロフィールを読み上げてくださった方も。音楽が流れ、彼女の声でメッセージが読まれ、そこにモデルさんたちが出て行って華やかなオーラを放って、そのすべてがミックスされて独特の雰囲気が生まれていたと思います。
―― 自身のプロフィールが読み上げられる中、それぞれが前を向いて、大きく足を踏み出して、堂々と歩かれていました。
-
顔合わせのとき、初めてみなさんにお会いしましたが、
「ステージではどうすればいいんですか?」
「モデルのウォークはどうすればできますか?」
など、どの方も不安でいっぱいな様子でした。
―― 皆さん、すごく高いヒールの靴を履いていて、ヒヤヒヤしました。
-
上手だったでしょう?リハーサルのときに一番に出た彼女もこーんな高いヒールでした。初めて履いたときは、『歩けませーん』でしたが、本番では堂々と歩いていましたね。
「ずいぶん上手になりましたね」
といったら
「慣れちゃいました」ですって。
みんなこの日が楽しみで楽しみで仕方がないって感じで、本当に前向きでしたよね。
――
途中で帽子を取って、ウィッグなしで歩かれた方にも感動しました。
一段と大きな声援と拍手が沸き上がりましたね。
- 私たちは舞台の裏で大歓声を聴き、「見たいねーっ!!」と言っていました。彼女は本当に前向きで明るくて、大きなパワーをもらいました。
―― ショーにはがん研有明病院乳腺外科の先生方も、ベルサーチの衣装に身を包んで登場してくださいました。
- モデルさんの手を取ってランウェイを歩かれましたが、先生方が登場されただけでも、おおいに盛り上がりましたねえ。
―― そういえば、マイコさんも最後に登場されましたが、プロフィールの紹介がありませんでした。もしマイコさんご自身がプロフィールを書くとしたら、どのようになりますか?
-
そうですねえ……こんな内容かしら。
「私が乳がんと宣告されたとき、当時中学校2年生だった息子は『大丈夫だよ。これからママをサポートするからね』とそっと抱きしめてくれました。いつのまにか私と同じくらいに背が伸びた息子は、やさしくたくましく成長していました。この子のために絶対に死ねない。強く心に誓いました。あれから7年、ずっと支えてくれた息子、そして、家族、まわりの友人、サバイバーの有志たち、今までありがとう。これからもよろしく、の気持ちを込めて」
―― 素晴らしいです。その息子さんはもう成人されましたね。
それにしても不思議ですよねえ。このファッションショーにはただ患者さんが集まっているだけではない何かがありますね。
- ありますねえ。何なのかしら。でも、みなさんを見ていると、乗り越えた、という何か強さを感じます。宣告され、泣き暮らす毎日を過ごすという経験をみんなくぐり抜けてきたけれど、病気と向き合って逃げずに治療したから、今ここにいると思うんです。
ライター:半沢裕子
※登場人物の肩書は2016年6月当時のものです